屋根の形状や勾配はリフォームで変更可能?費用相場や確認申請について解説

「屋根の形状や勾配ってリフォームで変えられるの?」
「屋根の形状を変えて、何かデメリットはある?」

この記事では、そんな疑問にお答えして屋根の形状変更/勾配変更リフォームに関する基礎知識をわかりやすく解説します。

屋根の形状や勾配を変えるリフォームは、大掛かりな工事にはなりますが可能です。

古い屋根の形状変更は耐久性を向上させられますし、お家の外観イメージも一新できます。

勾配変更工事には、雨漏りのリスクを低減できるメリットがあります。

ただしどちらの工事も大規模になるため、注意が必要な点も。

後悔しない屋根リフォームができるよう、ぜひこの記事を最後まで読んで参考にしてください。

屋根の形状や勾配を変えるリフォームはできる?

結論から言うと、屋根の形状や勾配を変えるリフォームは可能です。

ただし、かなり大掛かりな工事になるため費用もその分かかること、家の構造によっては難しい可能性もあることは覚えておいてください。

屋根の形状を変えるリフォーム

屋根の形状を変えるリフォームは、どんな屋根に変えるか、現状からどれだけ変えるかによっても費用は変わってきます。

相場は300~700万円です。

屋根の形状を変えるリフォームのメリットとしては、お家の外観イメージを大きく変えられるほか、機能性を向上させられることが挙げられます。

また、雨漏りの根本的な解決策として屋根の形状変更リフォームを行うこともあります。

中古住宅を購入してリノベーションをする際に、屋根の形状リフォームを行うことも少なくありません。

屋根の勾配を変えるリフォーム

屋根の勾配を変えるリフォームは、2種類の工事方法があります。

1つ目が、今ある屋根の上にさらに屋根をかける、野地天張り増しカバー工法という工事方法。

既存の屋根の撤去費用がかからないので比較的安価に住みますが、大きく勾配を変えることはできません。

また、既存の屋根の状態が悪く耐久性がないと判断される場合は、工事ができない可能性があります。

もう1つは、今ある屋根を撤去して屋根の基礎部分から作り直す方法です。

大きく勾配を変えたい場合、勾配のある屋根を陸屋根(勾配のない平らな屋根)に変えたい場合に選択されます。

かなり大掛かりな工事になりますので、家の大きさによっては1000万円を超える可能性も。

屋根の高さや勾配が変わった場合、確認申請が必要になればその分の費用も追加されます。

以上、屋根の形状や勾配を変える場合には、それなりの工事規模になることがおわかりいただけたかと思います。

かかる費用と工事によって得られるメリットを比較して、本当に工事を行いたいかを考えてみてください。

屋根の形状・勾配を変えるリフォームの注意点

屋根の形状・勾配を変えるリフォームをする場合は、以下の3つの点に注意をしましょう。

  • 下地の補修費用が掛かる場合がある
  • 工事中、家に住めない可能性がある
  • 確認申請が必要な場合がある

3つ目の確認申請については記事の後半「屋根の形状を変えたら、確認申請が必要な場合も」で詳しく解説しますので、ここでは最初の2つについて説明します。

下地の補修費用が掛かる場合がある

屋根材を撤去して下地を確認してみたら想定以上に傷んでいて、補修のために追加費用がかかる場合があります

多少の補修費用はあらかじめ見積もりに入っているかもしれませんが、本当の状態は屋根材を撤去して実際に見てみるまでわかりません。

気付いていなかっただけで雨漏りが起こっていて、下地が腐りかけていたなんて可能性もあるのです。

工事金額の安さを押し出してくる業者の中には、この辺りの補修費用を全く見ておらず、後から多額の追加費用を請求してくる者もいます。

見積もりにどこまでの補修費用が入っているか、契約をする前にリフォーム業者に説明してもらうことをおすすめします。

詳しい内容や補修費用について丁寧に説明してくれるかどうかを、業者選びの1つの基準とすると良いでしょう。

工事中、家に住めない可能性がある

屋根の形状を変える工事の期間中は、一時的な引っ越し(仮住まい)をお願いされる場合もあります

工事自体は、一度屋根材を撤去し、必要な下地工事を行ったうえで新しい屋根材を施工するという流れになります。

工事中に雨漏れが起きないよう防水対策はしっかり行われますが、埃や騒音などは防げません

住みながらの工事は住んでいる側・工事をする側双方にとってやりにくさが生じるので、仮住まいの方がストレスなく過ごせておすすめです。

工事を検討する段階で、家の近くのウィークリーマンション探しておいたり、その分の費用を計算に入れたりなど事前の準備を忘れずにしておきましょう。

工事直前になって探すと、空きがないことも考えられます。

その時になって慌てないよう、しっかり計画しておくことが大切です。

仮住まいの部屋探しを手伝ってくれたり、不動産業者を紹介してくれたりするリフォーム業者もいるので、まずは見積もりを作ってもらう段階で聞いてみてください。

屋根の形状を変えるリフォームの種類と費用相場

屋根の形状を変えるリフォームの費用は、変えたい屋根の形状によって変わります。

現状の屋根の形状や下地の状態によっても上下しますので、相場はあくまで目安と考え、正確な金額は業者に見積もりを取ることをおすすめします。

まずは費用相場を簡単に表にまとめます。

リフォーム後の屋根の形状費用相場
切妻屋根400~500万円
寄棟屋根500~600万円
片流れ屋根300~500万円
1つずつより詳しく解説していきます。

切妻屋根へ変える

切妻屋根(きりづまやね)とは、2枚の板を左右対称に合わせた三角屋根のことです。

日本の住宅では最も一般的に用いられている屋根になります。

構造がシンプルな分、工事やメンテナンスが比較的簡単で、雨漏りのリスクも低いと言われています。

屋根裏に換気のための設備を設置しやすいのもメリットです。

デメリットとしては、妻側(屋根を横から見た時三角になっている側)に直接紫外線や雨水が当たりやすく、劣化しやすいことが挙げられます。

よく採用される形状であるため、特徴的な外観にはならないこともデメリットの1つです。

切妻屋根に変える際の費用相場は、400~500万円ほどです。

寄棟屋根へ変える

寄棟屋根(よせむねやね)とは、4つの屋根面によって構成される屋根です。

安定感のある外観になるため、人気の屋根形状の1つです。

機能的にも、以下のようなメリットがあります。

  • 風や台風に対して比較的強い
  • 4方向に傾斜があるため、雨水や雪の排水がしやすい
  • 4方向の傾斜は壁面の保護にもなり、劣化を防ぎやすい

一方デメリットとしては、雨樋や棟が長くなる分、費用がプラスになること、棟と棟が交わる部分が増えることにより雨漏りのリスクが上がることが挙げられます。

部材のロスが多く出やすいこともあり、寄棟屋根に変える場合の費用相場は500~600万円になります。

片流れ屋根へ変える

片流れ屋根(かたながれやね)は、片方に全面的に傾斜している屋根です。

スタイリッシュでモダンな見た目になることから、近年新築では人気の屋根の形状になります。

壁を高く取れることができる分、窓も高い位置に設置できるので家の中を明るくできるのがメリットです。

さらに、屋根裏スペースが使える、他の屋根形状と比べて費用が抑えられるというメリットも。

デメリットは、以下の点が挙げられます。

  • 雨を一面で受けるため雨樋があふれやすく、屋根自体も劣化しやすい
  • 屋根のない側の壁は紫外線や雨が直接当たりやすく、劣化しやすい

片流れ屋根に変える場合の費用相場は、300~500万円になります。

屋根の形状と屋根材の種類に関しては、「【徹底比較】屋根材の種類と特徴まとめ!価格や耐用年数から選ぶポイントまで解説」の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

やってはいけない屋根の形はある?

屋根の形状は多くの種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

気を付けなくてはいけないのは、屋根の形状よりも建築基準法による制限です。

具体例には、以下のような規制があります。

制限の名称内容
絶対高さ制限地面から屋根の最上部までの高さは10mまたは12m。
※どちらになるかは都市計画の規定による。
隣地斜線制限隣地の境界線からの距離により、屋根の高さと勾配が制限される。
目的は、隣地の日照を確保するため。
道路斜線制限道路からの距離により、建物の高さが制限される。
目的は、道路の見通しや風通し、採光を確保するため。
北側斜線制限北側の隣地の境界線からの距離により、屋根の高さと勾配が制限される。
目的は、北側の隣地の日照を確保するため。

上記の制限に抵触するものは違法建築になってしまいますので、そもそも施工できません。

お住まいの地域によって規制の数値は変わってくるので、きちんと知識のある施工業者を選ぶようにしましょう。

屋根の形状・勾配を変えたら、確認申請が必要な場合も

屋根の形状を変更するリフォームは、基本的には確認申請は必要ありません。

確認申請が必要なのは、床面積が10㎡(約6帖)以上増える増築、物置やカーポート設置などの工事をする場合です。

ですが、屋根の最高部分の高さが今より高くなる場合は確認申請が必要になることもあります。

お家の地域の法令によって変わってきますので、事前に確認が必要です。

ただし、2025年4月に建築基準法の改正が予定されており、床面積が増えなくても大規模修繕や大規模模様替えをする場合は確認申請が必要になります

屋根の吹き替え、外壁の張り替え、階段の位置の変更、間取りの変更等が新たに確認申請の対象となるため、屋根の形状変更も確認申請が必要となる可能性があるのです

詳細の規定はまだ発表されていない部分もあるため、国の発表を待つ形となります。

確認申請の書類作成は、建築士に代行してもらうことがほとんどです。

代行手数料の相場は現状は15~30万円ほど。

ですが、法改正により提出する書類数が増える予定となっており、申請する物件数も増えるであろうことから、費用が高くなることも考えられます。

確認申請を通すために、基準に適さない他の箇所の工事が追加で必要になる場合もあります。

屋根の形状変更リフォームを行うハードルは、高くなる見込みです。

法改正直後はリフォーム業者や自治体が詳細の把握や対応に追われるため、スムーズに話が進まない可能性もあります。

通常より時間がかかることも念頭に置いて、余裕を持って工事ができるように計画しましょう。

屋根の形状・勾配を変えるリフォームは、早めにプロに相談しよう

ここまで解説してきたように、屋根の形状や勾配を変えるリフォームは可能ですが、簡単な工事ではありません。

工事規模の大きさはもちろんですが、建築基準法の改正によってこれまで以上に費用がかかる可能性があります。

工事後に後悔しないよう、信頼できる業者を選ぶことが非常に大切になります。

ぜひ以下のポイントは押さえるようにしてください。

  • 見積のわかりやすさ
  • 工事内容や工事中の住まい等に関する説明の丁寧さ
  • 法改正への理解

余裕をもってプロに相談をして、安心できる屋根形状変更リフォームができるようにしましょう。

記事の監修者

長江勝彦

長江 勝彦

1966年創業、外壁番長の代表取締役。地元、富山県を中心に住宅のリフォーム・塗装業務を行っており、これまで500件以上の施工実績を持つ。

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