インターネットの知恵袋にあるような巷の声として、「外壁塗装を定期的に必要だと勧めるのは業者の営業トークにすぎない」とか「外壁塗装は見た目だけの効果で、20年以上していなくても大丈夫だ」という説があります。
しかし本当にそうでしょうか。外壁塗装は見た目だけの効果しかない・業者の単なる営業トークなのでしょうか。
本記事では、外壁塗装を放置したままの状態にしておくと、どんな劣化症状が生じるかについて解説していきます。
外壁塗装を侮ってしまうことで手遅れとなり大変な結果をまねかないために、一読していただけたらと願っています。
目次
外壁塗装は必要か?
外壁塗装が不要な場合は、外壁塗装を必要としない外壁材を使用している時のみに限られます。
それは、レンガやタイルの外壁で、材質から塗装する必要はありません。
また、耐久性が高い外壁材を使っている場合、20年や30年という寿命があります。
例えば、樹脂系サイディングは30年という保証期間があり、それまで塗装を必要としない点からみると、メンテナンスフリーといえるでしょう。
しかし、一般的な戸建てでは、窯業系サイディングが使用されており、そのシェア率は70%以上です。
シェア率が高く定番といえる窯業系サイディングは劣化していきますので、定期的な塗装メンテナンスが必須の外壁材といえます。
メンテナンスを放置してしまうと、塗り直しができないなど手遅れになってしまうでしょう。
ですから、ほとんどの外壁は外壁塗装は必要です。
では、手遅れに近い劣化症状について次章から解説していきます。
外壁塗装が手遅れになる6つの劣化症状

外壁塗装を放置しておくと、外観も損なわれて行きますが、それ以上に内部で大きな悪い影響を及ぼします。
外壁塗装の必要性は、業者の単なる営業トークでも、見た目だけの効果だけではないのです。
外壁塗装をせずに、劣化症状がもはや手遅れに近い状態になっていることがあります。
以下に6つの劣化症状の具体例を説明していきますので、思い当たる症状があるなら要注意事項として、業者による点検を受けることをおすすめします。
カビ・コケの付着
カビやコケの繁殖は、外壁塗装の機能が落ち、外壁を水分から保護できなくなった時に生じる劣化症状です。
カビやコケは外壁を脆くし、ひび割れや反りを引き起こします。
ですから、外壁にカビやコケがあるのに気づいたら、家の保護機能の低下を察知し早急に外壁塗装の検討が必要です。
放置すると外壁内部に水分が侵入し、建物の構造部に腐食を引き起こすでしょう。
もし、建物の構造部に腐食がみつかったなら外壁塗装は手遅れです。
色あせ
外壁は絶えず紫外線にさらされており、それが原因で起こるのが色あせです。
色あせは塗料の防水機能が低下し、塗料の塗膜によって保護されていた外壁が無防備になっている状態を示します。
色あせは住宅の劣化を示し、ひび割れが生じ雨漏りが起きますので注意が必要です。
特に雨漏りは住宅を劣化させる最大の要素で、住宅の耐久性にも関係してきますから、手遅れにならないうちに外壁塗装をして保護対策を施しましょう。
大きなひび割れ
ひび割れの大きさは、0.3㎜の幅を基準として症状が分かれてきます。
- 0.3㎜以下のひび割れ
補修の必要はなく、外壁に与える影響や雨漏りの心配も少ない程度です。しかし、このレベルでの早期発見は重要で、これ以上広がらないように定期点検しましょう。 - 0.3㎜~1.0㎜
ひび割れの幅がこの程度になると、補修を早くすることが必要です。外壁材が内部で割れている場合が考えられ、これ以上放置するとさらに悪化し手遅れになるでしょう。 - 1.0㎜以上
早急に補修が必要なレベルです。大きな幅のひび割れサイズになり、建物の構造部分まで問題が起きている場合があります。建物の強度に影響する重要なひび割れですので、外壁塗装をするだけでは手遅れです。
チョーキング現象
チョーキング現象とは、外壁の表面に白いチョークのような粉が吹いたようになる現象です。外壁を触ると白い粉が手についてきます。
紫外線や風雨などの影響で、塗料が劣化することで生します。ですから、外壁塗装を必要とするサインとみなせるでしょう。
放置しておくと外壁に剥がれやひび割れを起こし、また塗料の防水性が落ちることで、カビやコケの繁殖を促します。
チョーキング現象は、住宅の美観を損ない耐久性を低下させるため、放置すると深刻な劣化が進行します。
手遅れにならないよう注意が必要な症状といえるでしょう。
外壁材の反り・浮き・はがれ
外壁の反りや浮きは、塗装メンテナンスの時期を過ぎた住宅にみられる現象で、手遅れに近い経年劣化といえます。
外壁材のサイディングボードは、セメントを主成分であるため水分を吸収しやすく、乾燥と収縮を繰り返すことで反りや浮きが生じます。
そうした水に弱い外壁を保護しているのが外壁塗装といえるのです。
外壁塗装の防水が切れて反りや浮きを生じた外壁は、雨水を吸い込み続け必然的に雨漏りを引き起こします。
外壁の反りや浮きは早期発見し、早急に外壁塗装が必要な劣化といえるでしょう。すぐに手遅れになりますので注意してください。
屋根の剥がれと塗装メンテナンスの記事も合わせて参考にしてください。
雨漏り
外壁塗装の放置で、家の中まで雨漏りがしてくると、もう外壁塗装では対処できない状態で手遅れといえます。
雨漏りは劣化の代名詞です。雨漏りは建物の内部まで傷みが進行し、建物自体に深刻なダメージを与えます。
すぐに業者に相談し外壁修理をお願いしましょう。
手遅れかどうかを判断する基準

劣化がかなり進んでいても外壁塗装で対処できる場合も考えられます。その判断の基準とはなんでしょうか。
手遅れかどうかを判断する基準を解説します。
劣化の進行が外壁の内部までいっているかどうか
外壁の内部にまで進行すると、外壁は風雨から建物を保護する機能が果たせません。状態がそこまで深刻だと外壁塗装は手遅れです。
なぜなら、室内へ雨水が侵入し、建物の構造体である柱や梁を腐食させることがあるからです。
また金属製の外壁でサビが生じて穴があくと、塗装だけでは対処できない最悪の状態といえるでしょう。
しかし、中には外壁塗装を30年以上行っていなくても、状況によっては外壁塗装が間に合う場合もあります。
手遅れかどうかの判断は、あくまでも外壁と外壁内部にまで及んだ劣化症状で見極められます。
プロの判断に任せる
素人が判断するには、外壁の状況を見ても分からないことが多くあります。
外壁調査は専門分野ですので、外壁のプロによって見極めてもらう必要があるでしょう。
外壁の劣化が相当進んでいても、周囲の環境によっては、内部はそれほど劣化していないこともあるため、専門家の判断に頼ることは大切です。
放置して手遅れになった場合の5つのリスク

防水機能と防汚効果の低下
前述しましたが、外壁には防水機能がなく、外壁塗装で雨水や湿気から保護しています。
放置して手遅れになるということは、雨漏りがするようになり、外壁内部の腐食につながります。
その結果は容易に想像できますが、外壁だけでなく住宅そのものを危険にさらすことになるでしょう。
さらに防汚効果が低下すると、塗料の塗膜の劣化により汚れが付きやすくなります。
手遅れになると、カビ・コケ・サビ・黒ずみで外壁が無残な姿になり洗浄しても、こびりついて取れなくなります。
外壁材の寿命が短くなる
寿命が尽きた塗料は、外壁を保護する機能を発揮できず、結果として外壁材が長持ちしません。
外壁塗装が手遅れになり塗装のタイミングを逸してしまうと、外壁材そのものを交換する必要が生じます。単なる塗装より、かなりの高額な費用になるでしょう。
大掛かりな工事が必要になる
塗装が手遅れになり、塗装だけでは補修が追い付かず大掛かりな工事が必要になります。
前項で説明した外壁材の取り換えにも、いくつか方法があります。
後述しますが、塗装の重要性を軽く見た代償は大きいでしょう。
定期的な塗装メンテナンスを行うのは、業者が煽る営業トークでないことは事実です。
もちろん業者の言う内容を全て受け入れる必要もありませんので、個人的に外壁塗装に関する勉強や調査をしておくことは賢明と言えるでしょう。
構造にダメージを与える
外壁は単に外観上の見栄えだけの問題ではなく、住宅の構造を支える重要な役割を持っています。
外壁塗装を放置し手遅れになると、ひび割れや内部の腐食が進み、外壁の強度が落ちてしまいます。
その結果、住宅の崩壊や倒壊の危険が生じるでしょう。地震が起きた時の小さな揺れにも耐えられなくなり崩れ落ちる可能性があります。
外壁塗装が手遅れになるリスクは、住宅の構造にダメージを与え、安全性を担保できなくなることです。
見た目を悪くし資産価値を落とす
住宅が与える印象は、どんな人が住んでいるのだろうと色々想像させられます。
そして、色あせや剥がれが目立つ家は、周囲の家より貧素になり劣って見えるでしょう。
さらに長期的な資産価値も低下します。売却時には修繕費用がかさむ住宅と判断され、売却価格を安く見積もられてしまいます。
相続する際にも、メンテナンスが放置された家として、相続される側は、あまり喜ばれないでしょう。
手遅れになった場合の対処法と費用

外壁塗装が手遅れになった場合の対処法には、どんな方法があるのでしょうか。
まず外壁の劣化調査を行います。外壁の劣化が部分的なものか、全体に及んでいるのかを調べてもらいましょう。
その結果、内部の修復工事ですむのか、外壁全体を張り替えるリフォーム工事が必要かを見極めます。
外壁リフォームが必要とされる場合は、以下の2つの方法が取られます。
カバー工法(重ね張り)
外壁材の内部が腐食していない場合には、カバー工法が取られます。
カバー工法とは、劣化した外壁材をそのままにして、その上から新しい外壁材を張り付ける工法です。
カバー工法は、劣化した外壁を撤去しなくて済むので、他の方法のなかでも比較的手軽な補修方法といえるでしょう。
費用は150万円~が目安です。
張り替え
劣化した外壁材を撤去し、外壁材をまったく新しいものに入れ替える工法です。
費用は200万円~が目安です。
外壁塗装の費用相場
外壁塗装が手遅れになると、上記のような高額な工事が必要になりますが、参考までに通常の外壁塗装の費用を以下に記述します。
- 30坪(約99m²): 約60万円~90万円
- 40坪(約132m²): 約90万円~120万円
- 50坪(約165m²): 約120万円~160万円
カバー工法でも最低150万円~ですから、住宅の規模によって、その金額を超える費用が必要とされるわけです。
手遅れにならないうちに外壁塗装を定期的に行うことは、さまざまな観点から賢明だと理解できるでしょう。
下記は外壁塗装に使用される塗料の種類や耐久性・費用について解説しています。
まとめ
定期的に外壁塗装を行うことの必要性を記述してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
外壁は住宅の外観を見栄えよくするための役割だけでなく、住宅を保護し支える重要な部分です。
定期的に塗装メンテナンスを行うことは、愛着ある我が家を長く美しく保ち、同時に資産価値を守る結果となります。
ですから、「外壁塗装を20年以上放置していても大丈夫」という巷のうわさを信じるのは危険です。
そして、決して業者の煽る営業トークではないと理解されるでしょう。
この機会に外壁塗装の重要性の認識を新たにしていただければ幸いです。