外壁は建物の顔ともいえ、外観から持ち主の個性やユニークさや美的センスをうかがい知ることができます。
外壁塗料も複数選択できる中で、現在注目を集めてきているのがフッ素塗料による外壁塗装です。
しかしフッ素樹脂塗料は他の塗料に比べ価格は高く高級な塗料です。
それでも年々普及率があがり人気を集めていますが、果たして価格の高さを凌ぐ、どんなメリットがあるのでしょうか?
またフッ素塗料について、有害性などマイナスイメージを与える問題点についてはどうなのでしょうか?
この記事ではフッ素塗料と他の塗料との価格の比較や、長い目で見た場合の価格のコスパの点、フッ素塗料を使ってみたくなるメリットについて考察していきたいと思います。
フッ素塗料の特徴
フッ素塗料は、フッ化カルシウムが主成分の「蛍石(ほたるいし)」という鉱物が原料です。
フッ素塗料は、現在よく使用されているシリコン塗料やウレタン塗料などの外壁塗料に比較すると価格は高めですが、耐久性や機能性の高さの面から考えると、コスパは良く人気が上がってきています。
特にフッ素塗料の機能性の高さから、頻繁に塗り替えがきかない大型建造物の塗装に使われています。
たとえば、有名な東京スカイツリー、六本木ヒルズ、明石海峡大橋で使用されていることはご存じでしょうか?
また最近では一般住宅にも多く使われるようになり、特に紫外線からダメージを受けて劣化しやすい屋根を中心に、外壁やシャッターなどに広く使用されるようになりました。
フッ素塗料は、その機能性から今後ますます需要と人気は、高まっていくことが期待されている製品です。
フッ素塗料の価格相場を他の塗料と比較
下表はフッ素塗料と他の塗料の1㎡における価格の比較表です。
塗料(樹脂)の種類 | 費用相場(単価) | 耐用年数 |
アクリル塗料 | 約1,200~1,500円/㎡ | 約5~7年 |
ウレタン塗料 | 約1,600~2,200円/㎡ | 約8~10年 |
シリコン塗料 | 約2,500~2,800円/㎡ | 約10~15年 |
ラジカル制御型塗料 | 約2,200円~4,000円/㎡ | 約12~16年 |
フッ素塗料 | 約3,500~5,000円/㎡ | 約15~20年 |
光触媒塗料 | 約3,500~5,500円/㎡ | 約16~20年 |
無機塗料 | 約3,500~5,500円/㎡ | 約15~25年 |
住宅用塗料として最も普及しているのは「シリコン塗料」ですが、それと比べるとフッ素塗料は1.6倍~2倍ほど価格が高くなり約3,500~5,000円/㎡で、ランクでも上から2番目の高さです。ですから高級品といえますね。
もし住宅30坪で塗装面積148㎡になると、諸経費を合わせ全体の費用は約100~150万円になってしまいます。
なぜなら外壁塗装の費用は、塗装費用だけを考えるわけにはいかないからです。
他にかかる費用として、外壁だけではなく軒天などの付帯部分、外壁の目地などのコーキング、ベランダ防水、足場などの費用、また近所へのあいさつ回りといった手間も上乗せされてきます。
たとえば、足場だけの費用を考えてみても、10万円~18万円と言われています。
外壁塗装の1回における費用や手間を考えると、塗装工事を簡単に考えるわけにはいかないことがわかりますね。
こうした点を踏まえて長い目で見た時、コスパどうなるでしょうか?次にその点について説明します。
フッ素塗料の1回分の塗装価格とLCCとの関係
LCCとは「ライフサイクルコスト」のことで、塗装に関してだけみると、住宅が新築から解体されるまでに何回塗装され、トータルとして費用の合計額がいくらなのかを指しています。
たとえば先ほどの項目で、フッ素塗装の場合、30坪の住宅全体の塗装費用が100~150万円かかる記述しました。
仮に40年後に住宅が解体されるとして、フッ素塗料工事の1回の費用を高く見積もって150万円とし、ライフサイクルコスト(LCC)を、よく使用されている他の2塗料と比較すると下表になります。
塗 料 | 工事費 | 耐用年数 | 塗装回数 | LCC |
アクリル塗料 | 約65万円 | 3~8年 | およそ5回 | 325万円ほど |
シリコン塗料 | 約100万円 | 8~15年 | およそ2回 | 200万円ほど |
フッ素塗料 | 約150万円 | 15~20年 | およそ1回 | 150万円ほど |
フッ素塗料の場合、1回にかかる費用は一番高いですが、よく使われている他の2つの塗料より塗装回数は少なくてすみます。
ということは塗装回数が少ないと、塗装に関連した費用や手間も大幅に削られてきます。それで住宅の一生をトータルして計算した費用から考えるとコスパが良いことがわかりますね。つまりLCCが削減できるわけです。
ですから1回にかかる費用が高くても、フッ素塗料の人気が高まっている理由を理解できることでしょう。
フッ素塗料の価格の高さを凌ぐメリット
フッ素塗料にはさまざまなメリットがあり、価格の高さを凌ぐほどの魅力があります。
下記について詳細に説明します。
1.耐用年数の長さ 2.親水性・低摩擦性の高さ 3.耐候性・耐熱性が高い 4.カビ・藻に強い 5.耐摩耗性の高さで光沢を保持 |
1.耐用年数の長さ
フッ素塗料の最大のメリットは耐用年数の長さです。
よく使われているアクリル塗料やシリコン塗料は8~15年ですが、フッ素塗料は15~20年といわれ大幅に上回っています。
フッ素塗料の領域も日々進歩しており、最近ではさらに耐久性が高くなった4化フッ素タイプ、ラジカル制御タイプといった様々なフッ素塗料が開発されています。
長持ちして塗り替え回数が少ないというのは、前述したライフサイクルコスト(LCC)の面から考えて断然お得といえるでしょう。
2.親水性・低摩擦性の高さ
親水性とは塗膜に水が馴染み密着しやすい性質のことです。親水性が高いと水が外壁の表面と汚れの間に入り込み、外壁に付着した汚れや空気中の汚染物質が、雨水で一緒に流れ落ちてしまいます。つまり本来なら雨水で汚れが付くものですが、反対に汚れを落としてくれるのです。
親水性とは逆に撥水性があると水汚れは弾いてくれるのですが、油分の汚れまでは落とせません。
親水性が高いと全て流し去ってくれます。
さらに低摩擦性で汚れも付きにくく、20年近く綺麗な状態を維持しますので、親水性と低摩擦性は外壁塗装には最適で魅力的な機能といえます。
3.耐候性・耐熱性が高い
耐候性とは気候や自然環境からくる変化への耐性のことです。
つまり太陽光、紫外線、酸性雨、塩害、酸素による酸化、日中や晩の温度変化などからおこる変形・変色・劣化などを起こしにくい性質のことです。
フッ素塗料は、外壁材と塗料が隙間なく密着する性質があるので耐候性が実現でき、建造物をこうした変形や劣化から保護しています。耐候性があることも塗料にとって重要なメリットといえるでしょう。
またフッ素塗料は温度変化にも強く、北海道・東北などの氷点下になる寒い地域や、反対に沖縄など極端に外壁が熱くなる地域でも、著しい機能性を発揮しています。
耐候性は大型建造物のLCC削減に貢献する
前述したLCCの項目の繰り返しになりますが、耐用年数の長さとともに耐候性は一度の塗装で長期間にわたり美観を保つため塗り替える必要がなくなり、特に大型建造物に重宝されています。
なぜなら大型建造物の塗装工事は途方もない大工事になり、工期も長くなり費用も莫大になるからです。
こうして耐候性の高いフッ素塗料は、大型建造物のLCC(ライフサイクルコスト)の削減に貢献しています。
4.カビ・藻に強い
カビや藻が繁殖しやすい条件は、水分や汚れ、空気の淀み、日陰です。
フッ素塗料はそうした日陰でジメジメした場所でも、藻やカビがつきにくく綺麗な外観を保ちます。
防カビ対策に有効な光触媒塗料もありますが、太陽光が当たることではじめて機能が発揮されるのに対し、フッ素塗料の場合は建物の北側など日光が直接当たらない所でも問題なく機能性の高さを発揮します。
ただし完全にカビや藻を防止できるわけではありませんので、もし付着した場合は、柔らかいスポンジなどで早めに取り除きましょう。
5.耐摩耗性の高さで光沢を保持
フッ素塗料の表目被膜は硬いため、摩擦や摩耗に強く耐摩耗性が高い塗料です。ですから塗装面の光沢が落ちづらいため、フッ素塗料の特徴でもある艶のある状態が長く継続できます。
なお、よく使われるアクリル塗料などは、約10年で光沢が20%も落ちてしまうのに比べ、フッ素塗料は約20年経っていても90%ほどの光沢を保てます。
フッ素塗料のデメリット
フッ素塗料のデメリットとして2つの点があげられます。
・塗料の価格の高さ ・施工業者が少ない |
ですが2つともフッ素塗料の魅力を削ぐものではありません。下記に詳しく説明します。
塗料の価格の高さ
フッ素塗料の一番のデメリットとなるのはやはり価格の高さです。高機能ゆえに高額になってしまいます。
しかし前述したLCC(ライフサイクルコスト)で説明しましたが、1回の塗装工事にかかる費用を長い目で見た場合のコストは、フッ素塗料は高いものではありませんでした。
しかし長い目で見るより、1回の塗装費用を抑えたい方には不向きといえるでしょう。
施工業者が少ない
フッ素塗料は、専門知識と技術が必要とされる上、まだ一般住宅での実績は少なく、取り扱いに慣れた塗装業者が少ないというデメリットがあります。
フッ素塗料は正しく施工できないと、フッ素塗料ならではの機能性や良さが発揮できません。なぜならフッ素塗料特有の工程が必要となってくる場面があるからです。
そして施工業者が少ないと、業者を探すのに時間と手間がかかる上、業者同士を比較し見積もりを取ったりするのも難しくなります。
しかし現在ではインターネット上で業者選びをしたり見積も可能となっていますので、そうした手段を利用するのもひとつの方法といえるでしょう。
また1966年創業の経験豊かな「弊社へご相談ください」
フッ素樹脂は有害か?
ネットや巷のうわさでフッ素樹脂加工が環境汚染や人体に有害という説を聞かれた方もおありかもしれません。
しかし有害とされたのは、PFOA(ピーフォア)とよばれるフッ化化合物のひとつで、発がん性の可能性がある物質として2019年5月に国連会議で製造と使用が禁止されたものです。
ですから禁止されたのは無数の種類があるフッ素化合物のごく一部で、フッ素樹脂全体が有害なわけではありません。
さらに現在では、医療現場でもフッ素樹脂の耐薬品性の高さが評価され、手術器具・輸血用チューブなどの内側に塗られて使われています。また身近なところでは、フッ素入りの歯磨き剤も有名です。
こうして口に入れる歯磨き剤や体内に触れる医療用器具としても使用されているくらいですから、フッ素樹脂が身体に入り込み害をきたすことを心配する必要はないといえるでしょう。たとえ飲み込んでもそのまま体外へ排出されます。
もちろんフッ素樹脂塗料自体にも害はないので安心して使用できます。
ツヤありの塗料しかない?
フッ素塗料には完全にマットな仕上がりの艶なしの塗料はなく、艶や光沢が特徴の塗料です。
ですが、光沢には7分艶、5分艶、3分艶と艶調整が可能です。艶が最大だと光沢がありすぎて敬遠される方にとってはツヤの段階を下げてみましょう。
フッ素塗料ならではツヤや光沢で、新築さながらの雰囲気を楽しめるのですが、落ち着いたマットな仕上がりの外観を希望される方には不向きといえるでしょう。
塗膜が硬く割れやすい?
フッ素塗料に限らず、通常の塗料はどんな塗料も丈夫なものほど硬いです。「フッ素塗料は割れるからやめた方がいい」というのも、よく知らない人や実績のない塗装業者さんからの言葉が多いようです。
フッ素塗料の硬さについては、塗料に弾性硬化剤を加えることで対処できます。
ただし弾性硬化剤を加えた塗料は膨れの原因にもなりますので、適度な量で場所を選びながらの使用がいいでしょう。業者とよく相談して決めることをおすすめします。
1度フッ素で塗装すると、次もフッ素で塗装が必要?
これは一昔前に言われていた言葉です。つまり一度硬化したフッ素塗膜はその上に塗ると密着しにくい性質があるため、昔は「フッ素しか乗らない、他の塗料は使用できない」などと言われていた時期もありました。
また今でも一部のネット情報にもそうしたデマが流れているのも事実です。
ですが、フッ素塗料であってもきちんとした下地処理を行い、専用の下塗り材で下塗りすることで、どんな塗料でも問題なく塗装が可能です。
そうしたフッ素塗料を扱ったことのある業者さんを選び、適切な下地処理と下塗り材を塗ることで解決できる問題です。
おすすめフッ素塗料【厳選3位まで】
下記に紹介するフッ素塗料のおすすめ厳選3位までは、すべて「4フッ化型フッ素塗料」というタイプで、フッ素塗料の中でも最もハイグレードで耐久性も格段に優れています。ここでは1位~3位までを紹介します。
【1位】日本ペイント「ファイン4Fセラミック」
価格の目安 | 4,580~8,120円/㎡(2工程~5工程) |
機 能 | 高耐候性、低汚染、透湿性、ひび割れ追従性、防藻、防かび |
期待耐用年数 | 15年~20年 |
・フッ素塗料といえば「ファイン4Fセラミック」という定番の人気でお客様満足度が高い製品です。
・耐汚染性で長期にわたり外観を美しく保ちます。
・下地を選ばずに塗装できるので改修に最適です。
日本ペイント「ファイン4Fセラミック」
【2位】エスケー化研「クリーンマイルドフッソ」
価格の目安 | 3,330円/㎡ (複層塗材の上塗りに用いる場合) |
機 能 | 超低汚染性、超耐久性、透湿性、防藻、防かび、幅広い下地適用性 |
期待耐用年数 | 15年~20年 |
・適応する下地剤が多いので選択幅が広がります。
エスケー化研「クリーンマイルドフッソ」
【3位】関西ペイント「アレスアクアセラフッソ」
価格の目安 | 4,000円/㎡ (3回塗り) |
機 能 | 低汚染性、耐久性、超親水性 |
期待耐用年数 | 15年~20年 |
・水性で臭いが少なく住宅内外で使用でき、住宅密集地でも気兼ねなく使えます。
・高い弾性を持っており、一般的なフッ素塗料の約6倍もの伸縮率のためひび割れがしにくい特性があります。
フッ素塗料のまとめ
この記事では、フッ素塗料のメリットやデメリット、問題点の考察やおすすめ製品3つをご紹介してきました。
さて、フッ素塗料の特徴の一つは価格の高さにありましたが、住宅や建造物を長い目でみると、ライフサイクルコスト(LCC)を削減でき、低コストにつながると理解していただけたのではないでしょうか?
さらにフッ素塗料には、耐用年数が長いことや親水性があって汚れを雨水で流し、建物の美観を長く維持できることなど、価格の高さを凌ぐ魅力やメリットがたくさんあります。
またこれまで問題視されていた有害性や割れやすさに関しても偏見のない正しい見方を説明しました。
さらに再塗装の難しさも適切な処理さえすれば問題ないこともご理解いただけたのではないでしょうか。
そして製品の紹介も3社のものだけ紹介しましたが、フッ素塗料製品の新製品の開発は、需要に伴い今後ますます期待できることでしょう。
この記事が、外壁塗装を考えておられる方や興味を抱いておられる方々にとって、興味深く啓発が得られ役立てていただけることを心より願っております。
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