近年、アクリル塗料は外壁塗装にはあまり使用されなくなったと聞きますが、どういった理由なのでしょうか?
この記事はそうしたアクリル塗料の持つメリットやデメリットに注意を向け、適した使用ができるように記載しました。
また近年新たに開発されているピュアアクリル塗料は、どのように通常のアクリル塗料と違っており、デメリットを解消しているのでしょうか?
外壁塗装を考えておられる方は、是非参考になさってください。
目次
アクリル塗料とは?
アクリル塗料の主成分はアクリル樹脂です。
アクリル樹脂自体は透明で、温度や湿度の変化に強い性質を持っています。
アクリル樹脂の歴史として、1950年代ごろから塗料として使用し始められ、価格も他の塗料と比較すると手ごろで身近な存在です。
ですから、昔は外壁塗装をする際は当たり前の塗料として普及していました。
また扱いやすいことで、素人のDIYでも広く用いらているため、よくご存じの方もいるかもしれませんね。
また加工しやすい特徴もあり、ボールペンや電子部品など、塗料以外にいろんな用途に重宝されています。
そしてアクリル塗料は、低価格で塗装後の色つやが良いことで一時は人気を博した塗料です。
しかし現在では耐久性が高いフッ素塗料などの新しい塗料が開発され、シリコン塗料などの改良が進み、それらが主流になっています。
また他の塗料の値段も安くなり、低価格が魅力だったアクリル塗料は外壁塗料としての需要は少なくなり、今や内装の方に使用される頻度が高くなっています。
なお、最近普及してきた「アクリルシリコン塗料」という製品がありますが、アクリルと名はついていても、シリコン塗料の一種ですので注意してください。
アクリル塗料のメリット
アクリル塗料のメリットとして下記の4つがあります。
1.低価格 2.色の種類が多い 3.施工・工事が簡単 4.重ね塗りできる |
1.低価格
アクリル塗料は、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料に比べると一番低価格です。
(具体的な価格の比較は「費用相場の比較」で詳細を後述します)
ですから手頃な値段でコストを抑えて塗装工事を行えるため、外壁塗装を気軽に行えます。
しかし、一度の塗装工事は安くて済みますが、耐久性が低いという弱点があることから、塗装工事の回数が多くなってしまい長い目でみると高くなってしまいます。
ですが、お洒落なお店など頻繁に塗装し直して美しさを保っておきたい場合や、塗装面積が狭い時などには向いているでしょう。
2.色の種類が多い
アクリル塗料は、塗料としての歴史の長さから、商品数も多く色のバリエーションが豊富です。
価格の安さを考えると、塗り替えるたびに様々な色に変えて気分を変えられ、外観に変化をつけられる利点がありますね。
様々な色の選択肢の中から自分が探していた好みの色を見つけられるため、理想的な納得のいく仕上がりを期待できることでしょう。
3.施工・工事が簡単
アクリル塗料は、乾燥不良も起こりにくく、扱いやすく施工のしやすさでは他の塗料より優れています。
その一つの根拠として、塗料には1液型と2液型とありますが、2液型は硬化剤が必要になってきて混ぜて薄めたり攪拌したりする工程が必要になり、その際の割合も難しく扱いにくい面があります。
ですがアクリル塗料は1液型が多く、水か溶剤で溶かすだけで使用できるので、素人のDIY用にホームセンターでも販売され親しまれています。
アクリル塗料は、施工業者も長く使われてきた塗料で慣れており、工事もミスの心配もない安心の塗料といえるでしょう。
4.重ね塗りしやすい
アクリル塗料は耐久性が低くても、重ね塗りができるので、手軽に修繕できます。
ですが、劣化が目立つ時に重ね塗りをすると、仕上がりに問題が生じますので注意が必要です。
アクリル塗料のデメリット
アクリル塗料には下記のデメリットがあります。
1)紫外線に弱い 2)硬化してひび割れしやすい 3)はがれやすい 4) 耐久性が低い 5) 湿気が入りやすい |
紫外線に弱い
アクリル塗料は紫外線に弱い外壁材です。
外壁塗料は紫外線に強いことが望ましいです。
なぜなら外壁は毎日紫外線の影響をもろに受けてしまうので、紫外線に弱いことは外壁材として大きな打撃となってしまうからです。
劣化の原因となる紫外線は塗膜に酸化還元反応を起こさせ、樹脂同士の繋がりを破壊して塗料の質を低下させます。
アクリル塗料はこうした現象が起こりやすく、紫外線を浴びることで、ツヤや発色の良さがすぐに失われ変色してしまうのです。
また日当たりが良いなら、紫外線の影響を強く受け、耐用年数が一層短くなります。
硬化してひび割れしやすい
アクリル塗料の成分であるアクリル樹脂は硬くなりやすい性質があります。
そして被膜が固くなるとひび割れを起こす原因となります。
それを補うためアックリル塗料には可塑剤が添加されています。可塑剤とは素材が固くならないようにする薬品のことです。
ですが可塑剤は、わずか数年で空気中に抜けていきます。そうして可塑剤が抜けて柔らかさを失った塗膜は、ひび割れを起こしてしまうわけです。
アクリル塗料がひび割れしやすい理由はここにあります。
はがれやすい
アクリル塗料は、前述したように塗膜に柔軟性が失われ固くなるとひび割れを起こし、次いで塗膜が剥がれて外壁が丸見えになってしまいます。そうなると見た目の美しさはどこにもなくなります。
耐久性が低い
アクリル塗料の耐久年数は3~8年です。現在外壁塗料の主流となっているシリコン塗料は7~15年ですから、かなり短いことがわかります。
アクリル塗料の価格は他の塗料と比較しても一番安いのですが、外壁塗装工事にかかる費用は塗料代だけでは終わりません。
その他にかかる費用の一部として、足場代だけでも15~20万円ほどかかります。
つまり耐久年数が短いということは頻繁に塗り替えが必要ということで、長い目でみると費用がかさんでくることが目に見えてきます。
それでもアクリル塗料も適材適所に使用でき、すぐに引っ越す予定の家とか、倉庫や小屋には適しているといえるでしょう。
しかし特に耐久性が求められる屋根の塗装には向かない塗料です。
外の湿気が入りやすい
アクリル塗料の湿気の入りやすさは、透湿性の高さに起因しています。
透湿性とは水分や水蒸気を通す性質のことです。
塗膜の透湿性の高さは、室内の湿気を逃がせる利点もありますが、同時に外からの湿気を中に入れてしまいます。
そうすると、梅雨時の湿度の高い時期に湿気を中に通してしまうと、体で感じる不快指数をあげてしまい、建材にも悪影響を及ぼしてしまいます。
デメリットを解消するピュアアクリル塗料
ピュアアクリル塗料は、オーストラリアの塗料メーカーで「アステックペイント」で製造販売しています。
ピュアアクリル塗料は、特別な方法で可塑剤などの添加物や不純物を一切取り除き、100%のアクリル樹脂を使用した塗料です。
ピュアアクリル塗料は、高い耐久性を誇り、またアクリル塗料のデメリットである紫外線に弱いことも解消しています。
耐久性の高さでは、紫外線が強いといわれるオーストラリアで、15~20年もの耐久年数があります。
これはフッ素塗料や無機塗料に匹敵する耐久性といえます。
そして丈夫さは飛行機の窓や水族館の水槽にも使用されているほどです。
このようにピュアアクリル塗料は、一般のアクリル塗料のデメリットを解消する機能性を発揮している塗料です。
ピュアアクリル塗料のメリット
ピュアアクリル塗料のメリットは下記の4つをあげられます。
1.ひび割れを防ぎ高い防水性を保つ 2.アクリル塗料に比べ耐久性が極めて高い 3.高耐候性で紫外線に強い 4.遮熱性が高い |
ひび割れを防ぎ高い防水性を保つ
ピュアアクリル塗料の大きな特徴は、非常に高い弾性をもち、ひび割れを防ぐことで防水性にも優れていることです。
一般的なアクリル塗料には、前述しましたが塗膜を柔らかくするため可塑剤が添加されていますが、可塑剤も3~5年で自然気化するため、塗料は弾性を失いひび割れが生じます。
しかしピュアアクリル塗料は、樹脂そのものに弾性があるため、可塑剤などの添加物はいりません。その弾性は6倍もの伸縮率を持っているため、ひび割れを防げるのです。
そして、ひび割れを防ぐことは高い防水性にも繋がります。
しかし一般的な塗料は塗装後に塗膜が硬化することはやむを得ず、どうしても地震の揺れや外気温や湿度で伸縮を起こすため、ひび割れを起こしてしまいます。
こうしたひび割れに対処できるのが、ピュアアクリル塗料の高い弾性です。
ピュアアクリル塗料は、長時間の伸縮性を保つ効果もあり、外壁に生じたひび割れにゴムのように伸びて、ひびの間を埋めて覆ってくれるので、そこから水が入るのを防止でき高い防水性を保てます。
そのゴムのように伸びる伸縮性は、公式HPでは600%といわれています。
可塑剤を使用した弾性塗料は短期間で失われるのに対し、ピュアアクリル塗料は可塑剤を一切使用せず、純正アクリルがもつ伸びる性質を長期間にわたって持続します。
外壁塗装の問題点であったひび割れを防ぎ、防水性を保つ機能性は画期的といえるでしょう。
通常のアクリル塗料に比べ耐久性が極めて高い
一般のアクリル塗料は3~5年の耐久性であるのに対し、ピュアアクリル塗料は、耐久性をテストする試験で15年以上の耐久性を持っていることが証明されています。
これは耐久性で有名なフッ素塗料と同レベルで引けを取らないといえるでしょう。
フッ素塗料の機能性や費用の詳細は下記をご覧ください。
高耐候性で紫外線に強い
一般のアクリル塗料は、太陽光からくる紫外線の影響を受けやすく耐候性が低い塗料です。
紫外線はアクリル塗料の分子の結合を壊してしまうことで劣化を生じさせます。
ピュアアクリル塗料は、一般のアクリル塗料より100倍近く大きな分子のため、破壊される個所が大幅に減少するので紫外線にも強く高い耐候性を示しています。
また雨や光・温度に強い有機ガラスを配合することで、塗膜を緻密にし紫外線が入り込むのも防ぐ効果があります。
こうして紫外線に強い優れた耐候性を保ち、長い期間安心して住める外壁塗料といえるでしょう。
遮熱性が高い
ピュアアクリル塗料が、遮熱性に富んでいるのは、太陽光の約50%を占める近赤外線を跳ね返すためです。
近赤外線は室内温度を上げ温める性質を持つ光線です。
ピュアアクリル塗料は、ナノセラミック粒子と遮熱顔料を添加することで、近赤外線を反射する塗膜を作りだします。
紫外線を抑えるだけでなく、室内温度を適正に保ち、住環境を快適にしてくれるのに役立つでしょう。
ピュアアクリル塗料のデメリット
たくさんのメリットがあるピュアアクリル塗料ですが、2点だけデメリットがあります。
汚れやすく、ふくれが起きる
ピュアアクリル塗料は、弾性塗料でゴムのような粘着性があるため、汚れを引っ付けてしまうデメリットがあります。そうした汚れは早い段階で生じます。
また弾性塗料の性質として外壁に、ふくれ(水ぶくれ)が起きやすいです。
膨れが生じる原因として、ひび割れが生じたときに水分が入り塗膜に侵入すると、温度が上がった際に気化した水分が塗膜を押し出すことで膨れが生じます。
ピュアアクリル塗料はひび割れが生じにくいので、あまり心配はないといえるでしょう。
価格が高い
ピュアアクリル塗料の施工単価は、3,500円程度が相場でフッ素と同じレベルの価格のため、高級品といえる塗料です。一般のアクリル塗料の1,500円程度に比べると、かなり高くなります。
ですが、耐久性の面から考えると、長い目でみるなら費用対効果の高い製品といえるでしょう。
そして扱える業者選びも大切ですので、ピュアアクリル塗料の実績があるかどうかも確認することをおすすめします。
他の塗料との耐用年数と費用相場の比較
塗 料 | 耐用年数 | 費用相場 |
アクリル塗料 | 約5~7年 | 約1,200~1,500円/㎡ |
ウレタン塗料 | 約8~10年 | 約1,600~2,200円/㎡ |
シリコン塗料 | 約10~15年 | 約2,500~2,800円/㎡ |
フッ素塗料 | 約15~20年 | 約3,500~5,000円/㎡ |
ウレタン塗料については下記に詳細がありますのでご覧ください。
https://gaihekibancho.com/uretan-merit-demerit/(新しいタブで開く)
一般のアクリル塗料はどんな場合におすすめ?
アクリル塗料は費用も安くつき、色のバリエーションも豊富で、扱いやすいというメリットがありますので、自分で塗装できるという方にはおすすめです。
また家の取り壊しや引っ越しなどで、長く住まないという方にも向いているでしょう。
なぜなら耐久性の面で問題があり、長期的でみるとコスとパフォーマンスは良くなく、近年、外壁塗装にもほとんど使われなくなっているからです。
ですがケースバイケースですので、使用に向く場合にはぜひ検討してみてください。
アクリル塗料のまとめ
アクリル塗料は耐久性についてデメリットとなりますが、古い塗料の歴史を持ち扱いもしやすく、色彩のバリエーションも豊富で、素人のDIYにも気軽に利用されてきました。
そして他の塗料に比べ価格が安価なことが最大のメリットといえるでしょう。
しかしデメリットも多く、早い段階で紫外線の影響を受けて劣化が進んでしまうことなど、近年、外壁塗装には使用されなくなっている塗料です。
その中でもアクリルの純度を100%にしたピュアアクリル塗料が開発され、耐久性はフッ素並みの優れた塗料も出てきています。
従来のアクリル塗料のデメリットを解消するといっていいでしょう。
ただしデメリットとして汚れやすい一面もありますので、施工業者とよく相談して決めることをおすすめします。
この記事を通じ、アクリル塗料を使用する際の適材適所などを良く知り、安くて便利なメリットを生かせる使い方をしていただけたら嬉しく思います。