自然塗料とは?相性と選び方・おすすめ製品を紹介

外壁塗料材にはアレルギー反応など健康に害があるという方も少なくないでしょう。

そんな中、環境や人体への影響に配慮された自然塗料の存在を聞くと、興味を引かれますよね。

では、自然塗料とは一体どんな塗料なのでしょうか?本当に人体に無害といえるのでしょうか?

また、どんな壁材にも使用できるものでしょうか?

自然塗料にもたくさんの種類があります。おすすめの自然塗料を知りたい方もいるのではないでしょうか?

この記事では有害物質を出す塗料ではなく、人体に優しい塗料を探している方のために自然塗料についてまとめました。

選択肢の一つとして、自然塗料への理解を深めて賢明な選択ができるように願っています。

おすすめ塗料もご紹介していますので、最後まで読んでいただければ幸いです。

自然塗料とは?

自然塗料とは、主成分が自然界にある天然素材からできており、石油や合成顔料などの化学物を含まない塗料です。


環境に優しく安全性が高いので、シックハウス症候群など人体に影響のある方への配慮から近年見直されてきました。

しかし、実のところ日本には古来から、漆(うるし)や渋柿などの自然塗料が使われています。


漆には腐食防止や防水作用があり、渋柿には消臭や殺菌効果などがあります。自然由来の塗料は、新しいものではなく、これまでも身近に存在し使われていた親しみあるものといえますね。

環境意識が高いドイツが発祥

現在の日本の自然塗料は、環境先進国ドイツから輸入されたものが広く普及しています。


ドイツでは、溶剤に有機物ではなく水性化したものや、VOC(揮発性有機化合物)が少ないものが使われていますが、環境へのこだわりは、それだけではありません。


LCAというライフサイクルアセスメントという手法が厳格に採用されているのです


LCAとは、製品の一生つまり原料から製造、流通、消費、廃棄までのすべての段階で、環境にどの程度マイナスな影響を与えているかを評価することです。

そうした環境問題への取り組みは「100%天然成分」かどうかのランク付けまでされる徹底ぶりです。

ドイツではここまで環境に与える負荷を深く追求していることから、ドイツが環境先進国といわれる理由がわかりますね。

明確な基準がない日本の自然塗料の現状

しかし日本ではドイツと違って、「何を自然塗料とみなせるか」の明確な基準がありません。


そのため、決して自然塗料といえないものまで、自然塗料として販売されている場合があります。


中にはホルムアルデヒドやVOCが発生するものまであり、安全性に疑問が残ることが現状です

自然塗料の成分と相性の良い素材とは?

自然塗料の成分

自然塗料の成分は、天然成分として前述した柿渋などの他に亜麻仁油、白ロウ、桐油、カルナバロウ、コパル、蜜ロウ、ラベンダーオイルがあります


環境や人体に有害でなく安全なものとして、多くのメーカーが自然塗料としてこれらの成分を扱っています。

自然塗料と相性のいい木材

自然塗料と従来の塗料との大きな違いにもなりますが、自然塗料は塗膜を作らない性質を持っています


そのため、自然塗料と相性のいい外壁は木材といえます


なぜなら塗膜で木材の呼吸を止めてしまわないので、木材本来の質感を活かせるからです


また、木材は呼吸することで調湿作用を発揮します。


そして木材の手触りや質感を残せる上、自然な経年変化を楽しめて木材ならではの良さを維持できます。

このように自然塗料は木材の性質を活かしながら、耐久性も期待でき長持ちさせるので、自然塗料と木材の相性はまさに打ってつけといえるでしょう。


さらに、自然塗料はメンテンナンスもしやすく、年月が経って塗料の性能が落ちた時には、再度同じ塗料を塗り直せるので効率的です。

ただし、サイディングやモルタルなどの外壁素材は、自然塗料には向いていません。

ですから自然塗料との相性を考えて、外壁材を選ぶ必要があるでしょう。

化学塗料と比較した自然塗料のメリット・デメリット

自然塗料にもメリットのみならず、デメリットもあります。

デメリットを慎重に考慮して、自然塗料を選ぶかどうかを決めましょう。

メリット

環境に優しく扱いやすい

自然界にある天然成分でできているので、人体や環境に適合した優しさがメリットです


また、化学製品の製造工程で排出される二酸化炭素を減らします


そして化学塗料特有の強い刺激臭がなく安全なため、塗装になれていない素人でも、DIYに使用できる扱いやすさはメリットといえるでしょう。

健康被害を抑える

自然塗料の原料は、自然界に存在する素材のため、人体の健康に悪影響が抑えられています。


また、化学物質が主成分の塗料では、ホルムアルデヒドやVOCを発生するため、アレルギーを引き起こす弊害があるのに対して、自然塗料にはその心配がありません。


しかし天然成分に対してもアレルギーを持つ人はいます。たとえば、漆(うるし)にかぶれる症状も一例といえるでしょう。


ほとんどの天然成分は健康被害が少ないですが、注意が必要なこともありますね。

デメリット

化学塗料より価格が高く耐候性が低い

化学塗料と比較すると、自然塗料は価格が高いことがデメリットです。


なぜなら、原料の天然素材を調達するための手間がかかることや、大量生産ができないことが理由です。


また自然塗料を塗装する際に、塗装技術が求められるため施工費も高くなります。


さらに化学塗料と比べて耐候性が低く、風雨や温度変化、紫外線に弱く劣化しやすい点もデメリットとして、理解しておきましょう。

乾燥に時間がかかる

自然塗料は化学塗料と比較して、乾燥に時間がかかる点もデメリットです。


たとえば、通常の化学塗料なら5日で終わるところが、乾燥のために6日かかる場合もあります。

わずか1日の差でも塗装工程が長くなることは、作業費に影響し施工費用が高くなってしまいます。


自然塗料を選ぶ際には、乾燥しにくいことも考慮に入れておきましょう。

メンテナンス頻度も多く費用も高い

前述しましたが、自然塗料は耐候性が低い傾向にあるため劣化しやすいデメリットがあります。


つまり、化学塗料と比較するとメンテナンス頻度も高くなり、長い目でみると費用も余計にかかってしまうわけです。


しかし自然塗料のメンテナンスは簡単で、劣化した部分を同じ塗料で塗りなおすだけで済みます。
製品の価格は割高ですが、メンテナンスが楽なのは助かりますね。

必ず安全というわけではない

前述したように、日本はドイツと違い明確な規定がないため、自然塗料と謳われていても、天然成分以外のものが含まれている場合もあります。

また、自然塗料にふさわしく食品衛生法の適合や建築基準法の「F☆☆☆☆」を取得していても、シックハウス症候群やアレルギーを引き起こす場合もあり、完全に安心できるわけではありません。


ちなみに、建築基準法の「F☆☆☆☆」のマークをよく見かけますが、これはホルムアルデヒドの放散率を表しており、☆が多いほど放散は少ないことを示しています。


しかし「F☆☆☆☆」を取得している自然塗料でも、塗料が乾燥して硬化していく段階でホルムアルデヒドが発生することがあります。


また、成分に天然素材が多く含まれるだけで、他の原料が含有されていたり、溶剤や製造工程でアレルギー物質を含む塗料もあるので注意が必要でしょう。


体質的に心配な方は、使用前に素材に触れたり、臭いをかいだりして安全性の確認をしてください。

自然塗料の種類3つと選び方

オイル系

オイル系の自然塗料は天然の植物油が使われており、主成分はひまわり油、亜麻仁油、荏胡麻油、胡桃油などです。

そしてオイル系の自然塗料は、木材によく使用されています。


さらに、オイルフィニッシュという技法の際によく使用されますが、この技法は、油分を木の内部に浸透させ、水分が付いても弾く特性を与えます


そして何より塗装面に塗膜を作らない特性は、木材との相性にぴったりです。

つまり、木材らしい質感を活かし木肌感を残してくれるので、木が持つ温かみが持続されることでしょう。

ワックス系

ワックス系の自然塗料は、動物性・植物性由来の天然蝋が使われています。
主成分は蜜蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋などです。

ワックス系素材は固体の状態なので、テレピン油などの溶剤に溶かし液状にしなければなりません。


また他の自然塗料と同様、木材との相性は良く、木材にワックスが浸透することで、表面の撥水性や防汚性を高めてくれます。
ただし、ワックスの効果は持続性が長くないため、定期的な塗り直しメンテナンスが必要になってくるでしょう。

オイルワックス系

オイルワックス系の自然塗料は、前述したオイル系とワックス系の特徴をあわせもつ良さがあります。


オイルワックス系の自然塗料も、やはり木材との相性はぴったりです。


オイル系自然塗料で使われていた植物油などで、木材の表面を保護すると共に、ワックス系の良さであった天然蝋で撥水性を持たせて水気に強い性能を高める効果があります。

選び方に影響する自然塗料の課題

自然塗料は環境に優しくライフサイクルアセスメント(製品の製造から廃棄まで環境に負荷をかけない)の観点からみると優れた塗料といえます。
しかし今のところ未だ普及段階といえないのが事実です。


なぜなら、建築用として実用的な面からみると、機能性や耐候性の低さやメンテナンスが多くなること、価格も高めであるなどの課題があるからです。

一方で、化学系塗料が、水性化やゼロVOC(大気汚染対策)などに取り組み環境へ配慮した技術が発展してきています。
つまり、化学系塗料も自然塗料の環境への意識をもった努力をしているわけです。

今後自然塗料が普及するには、環境や人体に及ぼす影響だけではなく、製品としての機能性や質や価格といった課題に取り組んでいくことが期待されるでしょう。


さらに日本の環境問題に対する意識がさらに向上することで、自然塗料の需要も増え普及してくることが考えられます。

自然塗料を選択する上で、自然塗料が抱える課題も重要な要素になってきます。


日本の自然塗料に対する安全基準も定かでないことも踏まえ、自然塗料を選択する上で、注意深さが求められてくるのが現状でしょう。

自然塗料のおすすめ製品

自然塗料をお探しの方におすすめの製品を紹介します。

オスモ【OSMO】 

ドイツから輸入された自然塗料で、日本で高い普及率を誇ります。また木材に合った塗料を探し求め研究された結果、生まれたのがオスモカラーといわれています。


主成分がヒマワリ油で、黄変しにくい仕上がりです。


日本でも、外・内部用において品揃えが豊富で、施工実績もあり、自然塗料に珍しく耐候性の強さも実証された製品です。

 リボス【Livos】

リボスは「天然成分でも健康に害があるなら使用しない」をコンセプトを貫く会社です。


亜麻仁油を主成分とした塗料ですが、アロマテラピーも考えられ、成分にオリーブオイルやラベンダーオイル、ローズマリーオイル等の芳香油が使用されています。


ドイツでも認められ、環境と健康の雑誌「エコテストマガジン」で常時上位ランクに位置しています。

アウロ【Auro】 


前述したリボスに在籍していた社員が独立し創設した会社で、理念はリボスと似ています。ライフサイクルアセスメントの手法で100%天然原料を使用し、成分内容も公開されている自然塗料です。


先ほどのドイツの「エコテストマガジン」でも常に上位ランクに位置している人体に優しい製品です。

クライデツァイト【Kreidezit】 


自然塗料としては外部の使用において耐候性が高い製品で、お城の外壁にも使用されています


塗装も簡単で、ウッドデッキなど頻繁なメンテンナンスが必要な個所にDIYでもオススメです。


天然成分100%で粒子が細かいため、木材に深く浸透し耐久性を上げます。


色彩が少ない点をカバーするため、輸入代理店がドイツと共同開発しプラネットカラーが誕生しています。


自然塗料の中で、油脂と顔料の濃度が高いため、1回塗りだけで美しく仕上がります。


まとめ

自然塗料とは、天然成分由来の環境や人体に優しい塗料です。

自然塗料はドイツ発祥で、環境へ配慮されたライフサイクルアセスメントの手法を考えられた意識の高い製品だといえます。

木材との相性が良く、木の呼吸を妨げる塗膜を作らず、その性質や肌触りを活かせる製品です。

一方で、乾燥に時間がかかり価格も化学塗料に比べると高いというメリット・デメリットがあります。

また日本は安全基準が規定されておらず、自然塗料と謳う製品でもホルムアルデヒドが発生したり、アレルギー成分が含まれるものがあり注意が必要でしょう。

自然塗料の抱える課題も大きいですが、おすすめ製品として紹介した中には、安全性に定評のある自然塗料です。

自然塗料は、環境問題や健康に関心のある方にとって、大きな選択肢となることでしょう。

この記事を参考にして、あなたにあった自然塗料を選んでくださいね。

記事の監修者

長江勝彦

長江 勝彦

1966年創業、外壁番長の代表取締役。地元、富山県を中心に住宅のリフォーム・塗装業務を行っており、これまで500件以上の施工実績を持つ。

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